差ではなく違いがプロとアマを分ける
投稿日:2020.09.09
一見普通であっても、とある場面に出くわすとプロの凄みを実感することがあります。
そしてそれは往々にしてプロからすれば当たり前であったりする。
これくらいプロなら出来ないとダメでしょう?と言わんばかりです。
先日高校生ぶりにプロ野球を観に行ってきました。
テレビの画面越しでは伝わって来ない迫力でとても面白かったです。
肩の強さ、打球の速さ、ボールさばき、どれをとっても上手いなと感じたのですが、何より驚いたのは守備の巧さ。
とんでもなく早い打球を近距離でも臆することなく捕球したり、明らかに長打になりそうな打球を見事な連携で単打にしたり、それはもう素人が見ても明らかな違いでした。
数値化しなくてもわかるほどの差。
本人たちからすれば当然でしょうが、さすがプロでした。
ここで自分もプロとしてゲストに驚かれた一幕を。
とある現場で働いていた時の事。
そこは観光地にある100席ほどのレストラン。
土日はもちろん、連休はとんでもなく賑わいます。
回転が早いので絶えず退席したテーブルを片づけたり、オーダーを取ったり、下げ物をしたり、料理を出したり、スタッフはひたすら動き続けます。
何をすれば一番スムーズなのか効率的なのかを常時考えながら実行する必要があるわけです。
自分が退席されたゲストのテーブルを拭いている時、かすかにカラカラッ!という水のピッチャーが注ぎ終えられた音がしました。
すぐ音のした方を見ると15mほど先のテーブルの方が水をグラスに注いでいて、最後の一滴を振り絞ろうとしている様子が目に入りました。
ゲストの数も多くわいわいがやがやしているせいか、周りのスタッフは誰もそれに気づいていません。
幸い近くに新しい水のピッチャーがあったのでそれを手に取ってそのテーブルに向かおうとすると、そのテーブルの方もちょうど手を上げてスタッフを呼んでいるところでした。
自分が合図に気が付いたリアクションをすると、そのゲストは空になったピッチャーを持ち上げて「水をください」とアピールをしてきました。
笑顔で軽くうなずきながら自分はすでに替えのピッチャーを持ち、そのテーブルに向っています。
交換し終えてその場を離れるとゲストが話をするのが聞こえました。
「すごい、オレ呼んだだけなのにあの人ちゃんと水持って来てくれた」
自分からすれば気づいて当たり前、気づかないといけないとやっていることが、他から見れば不思議なことだったのでしょう。
他にもお客さんがたくさんいて監視されているわけでもない、しかも遠くにいたスタッフが水が欲しいとアピールする前から水を持ってすでに近づいてきていた。
きっとどの業種でもそうなのでしょうが、五感を使って仕事をするわけです。
よく『勘』とか『第六感』などと言われることですが、
結局は五感と経験の統合です。
今回の場面を言語化すると
①勝手に聴覚が働いた
②音の正体が水のピッチャーが終わる音だと過去の記憶と照合した
③音のした方向に目をやった
④ピッチャーが真横に傾いているのが目に入った
⑤グラスに注いでいることが確認できた
⑥そのグラスにはほとんど水がなかった
⑦そのテーブルの他のゲストのグラスにも十分な量の水がなかった
⑧料理が残っているので明らかに水のお替わりが必要だと確信した
⑨合図されるであろうからそちらに目を向けておいた
⑩そのまま新しいピッチャーを取りに行った
⑪ゲストがキョロキョロし始めたので替えを必要としているのが確認できた
⑫呼ばれる前に目が合うよう早めに近づくようにした
⑬手を上げる動作に入ったのを確認した
⑭他のスタッフが気づいたらそのスタッフに水を渡すことを想定した
⑮誰も気づかず自分と目が合った
⑯自分が手に持つピッチャーを持ち上げて安心感を得てもらった
ここまで時間にして数秒ですが、頭で処理したことを思い出せるだけ言葉にしてみました。
他の何かをしていても自分に必要な音だけを拾うことを
カクテルパーティー効果
と言います。
氷の入ったグラスの中身が空っぽになる音や食器など何かを落とされた音、
そして「すみません」
という言葉にはどれだけ騒がしくても思わず反応するのはきっと職業病かもしれません(笑)
普段なら自分の名前には即座に反応できるのではないでしょうか。
いつも頭の中で考えていたり予測したりしていますが自分にとっては当たり前のことで、
息をするようにすべてのことを無意識に処理しています。
見ていないようで見ていますし、それは決して視覚だけではなく聴覚や空気感などの触覚もフル稼働させているのです。
通常の生活ではそこまで稼働させないはずなので、その場面に出くわした人からすれば
すごい
と感じられるのでしょう。
冒頭のプロ野球でも、
そんなレベルの人たちが集まっているからそのレベルでないと生き残れないわけで、
そのレベルでない人からすると違いが明らかなのです。
同じような人が集まると差が出にくくなるのですが、
自分はそんな中でもさらに違いを出せるようにしていきたいと考えています。
差はわかりにくくても違いはわかりやすい。
やはりプロでありたいからです。
あなたには違いを出せる何かがありますか?